DOI2006 TV放送を見て
2006年8月 3日
中野友加里さんは傘を小道具に使っての「SAYURI」の演技。数シーズン前には考えられなかったような情感あふれる演技で魅了してくれた。今シーズンのSPのエキシビション用アレンジということなので、競技会ではさらに密度の濃いプログラムに仕上げてくれることと思う。
恩田美栄さんのプログラムはグラナドスのスペイン舞曲集の第2曲「オリエンタル」。チェロのやさしい音色が心にしみる名曲で、演技以上に音楽に聴き惚れてしまった。こういうプログラムでも違和感なく見られるようになったのはやはり積み重ねた年輪のなせる技だろうか。最後と決めて臨む今シーズン、これまでのスケート人生の集大成となる演技を期待したい。
澤田亜紀さんは若さあふれる元気溌剌の演技。ダブルアクセル4つのジャンプシークエンスは彼女らしい躍動感をアピールするいい演出だった。ただ小道具に傘を使ったのは中野さんと重なってしまって少し損をしていたと思う。またこれからその存在をスケートファンに知ってもらわなければならない立場であることを考えると、小道具の動きのおもしろさで関心を集めるようなプログラムは彼女にとってあまりいいことではなかったのではないだろうか。
武田奈也さんは長身を活かしたスケール大きな演技が印象的だった。まだ特別表現がうまいとは思えないのだけど、体型や身のこなしの雰囲気に宝塚の男役のような独特の存在感があって得をしていると思う。そうした自分の資質にさらに磨きをかけていけばいい選手に成長すると思う。ビールマンスピンのポジションも彼女が一番きれいだった。
ジョニー・ウィアー選手は相変わらずの存在感。プログラムはトリノオリンピックのエキシビションと同じ「マイ・ウェイ」。あの時は少し冗長に感じる部分もあったのだけど、今回は動きにメリハリが効いていてとてもよかったと思う。自分の魅せ方を心得た、風格あふれる演技だった。
織田信成選手は去年までのコミカルな雰囲気とは違う、大人びた演技を見せてくれた。ジャンプの着氷のやわらかさはさすがで、全体に余裕を持って演技している印象を受けた。
一方高橋大輔選手は演技中の厳しい表情が強く印象に残った。これまで長く伸ばした髪の毛や不精髭が悪くいうと少し薄汚く見えることもあったのだけど、この日の演技では精悍さを演出する助けになっていたと思う。やはり織田選手とは対照的な個性をもったライバル同士なのだということを改めて認識させられた。
安藤美姫さんは生でご覧になったみなさんがそろって指摘しておられた通り、しっかり体がしぼられていて、動きに切れが戻っていた。表現力などはまだまだこれからの選手だと思うが、自分を励ましてくれた曲にのって踊る姿からはスケートをする喜びが感じられた。衣装も落ち着いた雰囲気で非常によかったと思う。
浅田舞さんはサラ・ブライトマンさんによるヴォーカル版の「アランフェス協奏曲」。この日の演技では長身を活かしたのびやかさが印象に残った。これまで彼女の演技には大きさを感じさせられることはあまりなかったのだけど、今回はなぜかそのことをとても意識させられた。実際に背が少し伸びたか、長い手足を活かす表現力が身についてきたかのどちらかだと思う。あるいはリンクが小さかったことも影響していたのかも知れない。
太田由希奈さんはご覧になった方のレポートでは怪我からの回復具合がまだ今一つ、といった内容のものが多く、どんな演技なのか期待と不安が入り混じった状態で見ていたのだけど、私は十分太田さんらしさの出た魅力ある演技だったと思う。繊細優美な身のこなしは相変わらず、黒鳥の翼を模した腕の動きも真に迫るもので、他の追随を許さない素晴らしい表現力だった。今の時点でジャンプに精度を欠いているのは仕方ないと思う。怪我と折り合いをつけながらの競技生活は困難に満ちたものになるだろうけど、「スケートは自分を表現する手段」と語る太田さんをどこまでもついていって応援して上げたい、そう思わせてくれる演技だった。
エレーナ・ソコロワさんのプログラムは単調な曲調で今一つじっくりと楽しむことができなかった。でもやはり相変わらずかわいい人で、あの笑顔が見られただけでも大満足だった。
村主章枝さんは大胆なコスチュームでの「カルメン」。素顔とはかけ離れたイメージの役になりきって演じて見せるところに女優魂が活きたプログラムといっていいだろう。観客の男性にじらしながらバラの花を渡す仕草などは実に堂に入ったものだと思う。
ステファン・ランビエール選手は見に行った方の評価がもっとも高かったが、評判に違わぬいい演技だったと思う。仮面をつけた状態での冒頭の動きから実にやわらかい動きで自分の世界を築いていた。これまで彼のプログラムは演技の内容と伴奏の音楽とコスチュームが全くばらばらで、音楽的な感受性に欠陥があるのではないかと思わせられることが多かったのだけど、今回のプログラムはその点がよく統一されていて非常によかった。彼の演技を見ていいと思ったのはおそらく初めてだと思う。最後の何度もポジションを変えた長いスピンも彼ならではのもので、日本のファンへの素晴らしいプレゼントだった。
浅田真央ちゃんは「カルメン」から「ハバネラ」。フィリッパ・ジョルダーノさんの癖のある歌唱が印象的なプログラム。少し大人びた演技を意識しているのだろうけど、妖艶なのかかわいらしいのかどっちつかずの表現になってしまっているように思った。年齢的に今くらいが一番難しい時期にあたるのかも知れない。それでもこの季節にルッツをクリーンに降りて見せるあたりはさすがだと思う。
トリを飾る荒川静香さんはサラ・ブライトマンさん歌唱によるシューベルトの「アヴェ・マリア」。ゴールドのコスチュームに身をつつんだ女王はいつもながらの神々しさ。跪いて祈りを捧げるような仕草には胸が切なくなってしまう。今回いろんな選手のそれぞれに素晴らしい演技を見せてもらったが、やはり自分はこの人の演技が一番好きなのだな、とあらためて確認した。
フジTVの放送の姿勢は事前に危惧されていたけれど、どうしても見せてもらわなければ困ると思っていた選手の演技は一通り放送してくれたので私としては一応満足のいくものだった。真央ちゃんのインタビュー映像がなければ後何人(組)かの演技が放送できたはずだし、真央ちゃんのかわいい笑顔を見ながらいらいらとさせられるのは不本意だが、昨日あまりにも酷い茶番劇を見せられてしまったので、今は大抵のことは笑って許してやりたい心境だ。
ご覧になった方の感想
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- Dotaの(o^_’b ぐっじょぶ
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- にゃんこままの部屋
- 女子2人嫁入り前日記
- ひとりごと。(音楽についての情報をいただきました。)
- キス&クライは、もういらない。 No more kiss and cry!
コメント
ご無沙汰しておりますm(__)m
久々の、いやSergeiさん初!?のフィギュア観戦記ですね(^^)
太田選手はDOIでは暖かくファンの皆さんが迎えてましたし、野辺山でもため息やら、歓声やら!ってかんじでした。
ジャンプはまだまだですが・・・やっぱり途中、途中のポーズであれだけ歓声を集めれる選手はなかなかいないですね(^^)
太田選手が復活してくれて、またスケートが面白くなってきましたね(^^)
前日のボクシングの1時間半の引っ張り方とか、前座をほとんど写さないとか、一方的な解説とか・・・・に比べればフジテレビさんもダイブ良くなってる様に思えちゃいました・・・よねぇ・・・・(^^;
こんにちわ、DOIの放映かなりの高評価のようですね〜〜
私はHD録画しながら、バタバタしながらの観戦でしたので、
ゆっくり見れたのって(と言うかどーしても見たかった)
由希奈ちゃんくらいかな。早く全部見たいのですが・・・
その由希奈ちゃんの姿を画面で見た時は、溢れる涙をこらえきれませんでした。
本当によく帰ってきてくれた、ありがとう、って思いました。
衣装も彼女にあってましたし、選曲も・・・
ショーナンバーだから時間が短いし、彼女の足の状態を考えると、
ちゃんとしたフリープログラムで完璧な状態で!と
要求するのは酷かもしれませんが、そう思わせるほど
彼女は素晴らしかった!
あの手足の表現力・・・スケートリンクを一気に
クラシックバレエのステージにかえてしまいましたね。
長野のK嬢さんのブログにも書いたのですが、
彼女の表現力はコーエンに勝るとも劣らない。
こんなスケーターは、世界中探してもなかなかいないのでは・・
と思いながら、ひたすら感動して見てました。
彼女の美しいイナバウアーも久々に見れて嬉しかった、
元々私は彼女のイナバウアーを見て、初めて
「イナバウアーって綺麗だなあ〜」と思い始めた人間ですから。
とにかく昨夜は、久々に大好きな由希奈ちゃんを見れて感動でした。
これからも頑張って欲しい・・・応援し続けたいと思います。
僕はしーちゃんのフアンだから、当然昨夜の放送の中では、しーちゃんが一番だと思う。やっぱり、1ランク違うと感じた。でも、それは僕がフアンだからひいき目かと思っていたが、sergeiさんはじめ、みなさんが褒めてるから安心したヽ(^o^)丿
特に、sergeiさんのしーちゃんの感想文そのものに神々しさを感じましたm(__)m
-> Dotaさん
コメントありがとうございます♪ 引っ越し&改名してから初めてまともに書いたスケートの記事でしたね。資金面その他の事情でなかなか生観戦ができず歯がゆい思いもしていますが、こんな季節にアイスショーをゴールデンタイムに放送してくれるようになったのはありがたいことです。
太田さんの復活はフィギュアスケートファンみんなが待ち望んでいましたね。暖かい歓声を受けて太田さんもうれしそうで、本当によかったです。
フジTVの放送はかなり改善されてきていると感じました。今回演技が放映されなかった選手のファンの方には気の毒でしたが、私には概ね満足のいくものでした。一部では非常に評判の悪い塩原アナウンサーの実況も今回はあまりにも癇に障るようなフレーズはなかったように思います。もう少し全体の会話の量を控え目にしてくれればなおよかったですが。
ボクシングの放送は10時まで枠が確保してあるのを見た時点で試合開始は9時頃だろうと予測していたので前振りはほとんど見なくて済みました。でも7時半からわくわくしながらチャンネルを合わせていた方はさぞかしいらいらしたでしょうね。前座については今までも放送されないのが普通だったと思います。
私としては放送時間の問題よりも結果の方に腹が立ちました。あれを見せられた後では大抵のことは許せる気がします。
-> sashaさん
フジTVの放送、悪くなかったですよ。もう少し演技中の会話の量を減らしてくれるとなおよかったですが、今後のさらなる改善に期待しましょう。
太田さん、あの繊細な表現力は健在でしたね。他の回ではルッツで転倒してしまっていたらしいのですが、今はジャンプの精度について気にしても仕方ないでしょうね。
あの指先まで神経の行き届いた情感豊かな舞は私にはカタリーナ・ヴィットさんを思い起こさせます。でもヴィットさんのような華やかさとは違い、内向的な繊細さを感じさせる独特の表現は世界中で彼女一人にしかできない、そんな風にも思います。
彼女の復活でますますフィギュアスケートから目が離せなくなりましたね。トリノ以降に興味を持つようになった方々にもぜひあの美しさを知っていただきたいですね。
-> 風の又三郎さん
放送前にいろいろなレポートを読んでいたのですが、私が目にしたのはウィアーやランビエールのファンの方が書かれたものが多くて、荒川さんについては「よかったけど少しお疲れ気味」といったような評価が多かったです。でも放送を見て私が一番感動したのはやはり荒川さんでした。風の又三郎さんも同じと伺って私も安心しました。
こんな駄文が神々しいなどとは畏れ多いです。(まだご覧になっていなかったら)TBして下さっている Alex さんの "blog EVERGREEN" をお読みになるといいですよ。さらに安心できますから。
TBありがとうございました。
ゆっくりTVを見る暇が無かったので、夕方HDに撮ったのを見ました。
ランビエール選手は、トリノオリンピックでのヴィヴァルディの四季(夏)の演技(FP) が、衣装と演技内容と音楽がちぐはぐで、???でしたが、今回は仮面を上手く使っていて、衣装もそれらしくよかったです。足を何度も変えたスピンはすごいと思ってしまいました。
高橋選手は、関大アリーナのオープニングセレモニーのときより、もっとワイルドな感じで、顔つきがすごかった!です。
後の選手、実はまだよく見ていません。又時間のあるときに・・。
ランビエール選手のとき、アナウンサーも解説者もしゃべりすぎてうるさくて、演技鑑賞の邪魔だと思いました。他の選手もだけれど、特に感じました。
なんでいつもあんなに大勢でしゃべるんでしょうね〜。
「DOI,TV放送を見て」楽しく読みました。
それにしても日本のスケーターの豊富さを再確認しました。これだけ役者が揃っていると、やはり余分なインタビュー映像と解説を少なくして、演技だけ連続して見せてくれた方が、もっと迫力があった。
私は、太田さんの演技に特にショックを受けました。まだ若干重い感じもしますが、音楽に魂を吹き込んだ舞でした。単にバレエの要素を取り入れてみましたよとか、単に腕を滑らかに動かしていますよとか、ではない、なんと表現したらいいのかな、楽団の指揮者の指揮のような、そんな音楽の神がとりついたような、誰も追従を許さない舞でした。そういうわけでSASHAのSWANLAKEより良かったよ。「復活」というよりも、由希奈ワールド第2幕の幕明けです。
(太田さんの怪我の内容公開も2重にショックでした。私は舞だけ見るだけでもよかった気がするけど、暖かく見守っていきたい。)
-> tattiさん
こちらこそTBありがとうございました。ランビエールについては同じことを感じていらしたのですね。でも今回の演技はよかったですね。高橋選手の表情、印象的でしたよね。同じ厳しい表情でもトリノオリンピックの時は緊張でいっぱいいっぱいという感じが伝わってきましたが、この日は演技に懸ける強い意気込みが感じられました。
実況&解説は、この日はスペシャルゲストの荒川さんがおられた分、余計に賑やかでしたね。荒川さんの声が聞けるのはうれしいですが、演技とは別にお聞きしたいものですね。早く他の選手の演技もご覧になれますように。
-> シーン2さん
本当に今の日本のフィギュアスケート界はいろんな個性をもった選手達がそろっていて壮観ですよね。この前の放送を見て改めてそう思いました。
太田さんの怪我は完治が難しいということは以前にも聞いていました。困難な競技生活になると思いますが、ファンのみんなで支えて上げたいですね。
でも演技の内容はそんなことを感じさせない、素晴らしいものでしたね。ただ単にテクニックを披瀝するだけではない、彼女の内面の思いをそのまま映し出すような、全く独自の表現でしたよね。新たな道のりをしっかり見届けて上げたいですね。