中国大会2006 女子シングル フリー
2006年11月11日
中国大会女子シングルは先週のスケートカナダの男子と同様に上位陣にミスの目立つ、少し物足りない試合展開となった。シェベシュチェンさんは力のある選手なので優勝という結果は決して驚くことではないが、あれほどジャンプにミスがあったにもかかわらず中野さんやエミリーよりも高い点がついたというのは少し釈然としない気がする。しかしとにかく本来の力は出し切れなくても2位に輝いたというのは中野さんの実力を示す結果といっていいと思う。
エレーナ・ソコロワさん:ノートルダムの鐘〜ロミオとジュリエット
全体に動きが重くスケーティングに滑らかさがない。やはりコンディションが悪そう。それでも時折見せてくれる笑顔はかわいらしかった。
浅田舞さん:白鳥の湖
コンビネーションジャンプを後半に集めて高い得点を狙う攻めのジャンプ構成。しかしフリップが両足着氷でコンビネーションにできず、結局サルコウからのコンビネーションを一つ入れることしかできなかった。ダブルアクセルでの転倒は本人の話ではコンビネーションの二つ目のジャンプに意識が先走ってしまったためのものらしい。今の彼女の実力を考えるとやはり前半にコンビネーションを跳んで確実に点数を稼いでおいた方がよかったのではないか。
しかし追加での参戦が決まったこの中国大会で彼女らしい優雅な演技を披露できたのは今後にとって貴重な経験になったはず。さらなる飛躍へとつなげて欲しい。
許斌姝さん
おそらくは3回転–3回転を狙った二つ目のコンビネーションジャンプで最初のトウループで転倒してしまう。トウループ自体は彼女にとって難しくはないジャンプのはずなのでもったいなかった。技術的にはSPに続き高いものを見せてくれたが、ジャンプにミスが目立ち、時間も長かったこともありSPにくらべると幼い感じのする演技になってしまっていた。今日のPCSくらいが適正な点数ではないかと思う。
中野友加里さん:プロコフィエフ シンデレラ
トリプルアクセルは封印して確実に点数を稼いで逆転を狙ったプログラム構成。ところがルッツからのジャンプシークェンスのダブルアクセルでまさかのお手つき。ループでもミスが出るなどやや精彩を欠いた演技になってしまった。SPに引き続き動きが硬く感じられ、彼女の本来の生き生きとした躍動感は出せていなかった。得意のスピンもおそらくビールマンをどこかで入れるつもりだったのを入れ損なってしまったのではないだろうか。それでもベストからはほど遠い演技ながら2位になったのは彼女の実力の高さを示す結果といえるだろう。
ベアトリサ・リャンさん
前を見つめる厳しい目つきが印象的な選手。安定感があり力強さを感じさせるスケーティングはこの後の澤田さんやミラ・リョンさんに少し似ているだろうか。表彰台も狙える位置につけていたがジャンプでミスを連発。それでも5位は立派な成績だと思う。
澤田亜紀さん:Paint it Black
同じく表彰台が狙える位置につけていたもののジャンプにミスが出てしまった。SPほどの元気のよさは出し切れなかった。それでもシニア初参戦としてはいい経験になったと思う。音楽はやや荘重な感じの強いアレンジで、もう少し軽快な曲の方が彼女には滑りやすかったのではないかという気がする。
ユリア・シェベシュチェンさん:Otonal
この音楽は2シーズン前にジョニー・ウィアーが使ってフィギュアスケートファンに強い印象を残した曲。決して表現力が持ち味というわけではない彼女がこの曲を選んだのは、これこそ勇気ある選択といっていいと思う。
二つ目のコンビネーションのルッツはこの人の持ち味である高さのある華麗なジャンプだった。これほど見事なルッツを成功させながらほかのジャンプではミスを連発してしまうのだからフィギュアスケートの奧の深さを感じさせられる。
これだけジャンプにミスがありながら中野さんやエミリーを凌ぐ点数がついた理由がよくわからないのだけど、やはり力のある選手なので実力が認められたということなのだろう。
エミリー・ヒューズさん:ドリーブ シルヴィア
SPを終えて2位につけていた中野さんが完璧ではなかったので国際大会初優勝のチャンスもあった状況でのフリー演技。しかしルッツがダブルになったのを皮切りにミスが目立ち始める。ステップなども足取りが重い感じでいつもの元気のよさがなかった。3位に後退してしまったが、本人としては力は出し切ったという思いがあるのかキス&クライでは満足そうな表情を浮かべていた。ベストの演技ではなかったもののまた一つ自信になっているのだろう。
衣装はスケートアメリカの時とは違い黒地にスパンコールを散りばめたものだった。彼女にはこうした色合いの方が似合うと思う。
コメント
はじめまして
中野選手3アクセルを回避しての負けは本当に残念です。
チャレンジしてほしかったと思います。
-> でびかぱさん
はじめまして。コメントありがとうございます♪
アスリートというのはいつもいいコンディションで試合に臨めるとは限らないので、調子の悪い時のことも想定して準備をしておくというのは悪いことではないと思います。今回トリプルアクセルを回避したのは練習での感触がよくなかったこともあるのでしょう。その後でミスが続いたので、もし挑戦していればもっとひどい結果になっていたかも知れません。
確かにトリプルアクセルは中野さんの最大の武器ですから、ファンとしては見たいですよね。でも今の中野さんはそれ以外の要素でも観衆を惹きつけることのできるスケーターに成長しつつあるところですから、大技にはこだわり過ぎずに応援して上げたいと思います。
おはようございます
トリプルアクセル回避した場合のプランが立てられてないと思いました…というのもアクセルがダブルだとダブルアクセルが3回も入ってしまうので、やはりどこかをトリプルに変えるようにしないと点数を取りこぼしてしまってると思います。本来はトリプルトウループを3−3でどこかで入れるつもりだったのかもしれませんが昨日の場合は少しカーブがかわりますが最初は2A-2Tではなく3T-2Tにすれば少しはトリプルアクセルを回避した印象をカバーできたのではないでしょうか?逆に大技にこだわりすぎてたから、抜いたときのことを考えてなかったともいえるのではないかと思いました。(長文になって申し訳ありません…自分のブログに書くべきでしたね)
先日は私の記事をエントリーしてくれてありがとうございます。
中野選手、残念でしたね。使用していた「シンデレラ」はプロコフィエフ。エミリー・ヒューズ選手の「シルヴィア」はドリーブ作曲です。一応、書いておきます。
-> Alexさん
こんばんは。長文のコメントありがとうございます。
あのジャンプの構成は事前に十分練り上げていたものではなく、調子が上がらないがゆえの苦肉の策だった可能性が高い、ということでしょうか。私もルッツからのシークェンスがダブルアクセルだったのでバランスが悪くないか、とは思っていました。最後にもダブルアクセルを跳んでいるので合計3回になるんですね。最初はループにすれば助走路の変更も少なくて済みそうな気がしますがどうなんでしょうね。
安藤さんの4回転もそうですが大技を持っているとそれなりの難しさも抱えてしまうことになりますね。中野さんのトリプルアクセルの場合は回転不足でダウングレードされることはあっても転倒してしまうような大きな失敗はあまりないので次善策の準備には気が回らなかったという面もあるのかな、と思いました。今回は自身でも想定外の調子の悪さだったのかも知れません。
ところで話は変わりますが、昨日ダヴィドフ選手を若手なんて書いてしまっていましたが中庭選手より年上のベテラン選手だったんですね。Alexさんのブログを見て気づきました。ロシアの若手ウスペンスキー選手やヴォロノフ選手と混同していたかも知れません。お恥ずかしいです。
こんにちわ〜〜トラバありがとうございます(^^)
セベスチェン選手の2回のルッツは確かに質の高い
大変素晴らしいジャンプでしたが、外はミスの多さが
中野選手より多かった気がするのに、あの順位は疑問です。
確かに中野選手は完璧ではなかったですが、
でも流れの点からいくと中野選手に軍配が上がるような・・・
う〜〜ん、やっぱり今の採点システムは難しいですね。
-> eyes_1975さん
音楽情報ありがとうございます。エントリーに記載しておきました。どちらもバレエ音楽なんですよね。
中野さんはシンデレラになりきれませんでしたね。次は笑顔の中野さんを見たいです。
-> sashaさん
昨日はあの順位に納得がいかなくてない知恵を絞りながらプロトコルとにらめっこしてました。結局セベスチェンさんのジャンプシークェンスが認定されていたのと中野さんのフリップがダウングレードされていたのが大きかったようですね。見た目には中野さんの方がずっとよかったように見えたのですが、新採点方式の難しさをまた感じさせられました。旧採点なら中野さんが優勝していたのでは、とも思いました。
でもいずれにしても中野さんは会心の演技でなかったことは確かなので、今度はいい演技を見せて欲しいですね。