NHK杯2006 男子シングル フリー

2006年12月 3日

まさかとは思ったが本当にやってくれた。女子に続き男子シングルでも日本勢の表彰台独占。日本男子も世界のトップと互格に戦える力があることをまざまざと見せつけてくれた、そんな大会になった。織田・高橋両選手が1位と2位を占めることは確実な情勢だったけれど、シニア1年目の小塚選手が3位に入ったのは大健闘。リー選手の不調に助けられた面もあったとはいえ素晴らしい快挙だった。今後の飛躍に向けて大きな自信を手にしたのではないだろうか。


諸般の事情でリアルタイムでは観戦できずBShiの生中継を録画したものを見たのだけど、手違いで織田選手のところからしか録画できていなかった。というわけで感想もダイジェストになってしまうけど、肝腎な部分を録り損ねなくて本当によかった。


織田信成選手:チャイコフスキー 交響曲第4番

2度のトリプルアクセルのほか全ての要素をミスなく演じた会心の演技。GEOの減点が一つもないのが素晴らしさを物語っている。強いて言えば2度目のルッツの後はトリプルの予定だったのではないかと思う。特にスピンのスピードは際立っていたように思う。

これだけ完璧な演技をしながら高橋選手に及ばなかった理由を考えると、やはり4回転ジャンプを欠いていたことと、SPに比べるとやや曲に乗り切れていない印象があった点が挙げられるだろうか。もちろん十分に音楽を表現できてはいたけれど、彼自身のSPや高橋選手のフリーがはまり過ぎといえるくらい素晴らしかっただけにやや見劣りしてしまう面もあったかも知れない。


アレクサンドル・ウスペンスキー選手

トリプルアクセルはステップアウトしてしまい次のトリプルトウループはジャンプシークェンスの扱いに。全体にややスピードや躍動感に乏しい感じがした。独特の雰囲気を持った選手なのでロシアの次代を担うエースへと成長していって欲しい。


小塚崇彦選手:ショパン ピアノ協奏曲第2番

冒頭トリプルアクセルはクリーンに決める。問題のフリップからのコンビネーションは二つ目のトウループの着氷でオーヴァーターンしてしまったものの予定通りトリプルを成功させた。フランス大会以来着実に進歩しているのが見てとれる。ほかにループの着氷が乱れるミスはあったものの、持ち味のやわらかくのびやかなスケーティングで魅了してくれた。中間のスローパートでの情感の出し方も非常にうまい。何も技をしていない部分で拍手をもらえる演技力は若いのに大したものだと思う。グランプリシリーズ初の表彰台は立派な快挙で、今後の活躍が一層楽しみになる。


李成江選手

4回転トウループ–ダブルトウループのコンビネーションは見事に成功。次のアクセルはシングルに。この後トリプルアクセルを2度跳んでいるのは予定を変更したのだろうか。中国大会を喘息のため欠場しコンディションは万全でないようで、最後はかなり苦しそうだった。シングルフリップはほとんどステップの延長のような気の抜けたジャンプになってしまっていた。それでも4回転ジャンプを常に試合で跳ぶだけの技術を維持しているのは立派なことだと思う。


高橋大輔選手:オペラ座の怪人

昨日のSPのジャンプがどれも非常に軽い感触で余裕を持って決めていたので調子はよさそうだと思っていた。期待通り4回転のトウループに成功。その後も予定していた技を次々と成功させていった。強いて言えば2度目のトリプルアクセルの着氷がやや不安定で、おそらくトリプルを予定していたコンビネーションがダブルトウループになってしまったのが目に見えるミスだろうか。

一番のポイントだった後半のジャンプも今回は正確に決めてきた。キャンベルカップとスケートカナダで跳ぶ前に転倒してしまったループも着氷がやや乱れたものの無事成功。これまで2度はこのあたりでミスを連発してしまったためにプログラム自体の印象が薄くなってしまっていたのだけど、これだけ技が的確に決まると実は素晴らしく中身の濃い完成度の高いプログラムなのではないかと思えてきた。

ジャンプを後半に集中して跳んだことでスタミナはかなり消耗したようで、最後はややバテ気味だった。そのためかストレートラインステップは素人目にはいつもよりエッジが浅かったような気がしたのだけどジャッジからはレベル4の認定をもらっている。サーキュラーステップも含めてほとんどのジャッジが加点しており、「世界一のステップ」の呼称が伊達ではないことを証明する演技だった。

ストレートラインステップの前にためを作って呼吸を整えるのは演出の面から見てもメリハリがきいていい工夫だと思う。ただPCSでTRだけほかの項目よりやや低く抑えられているのはここがマイナス評価になっているのかも知れない。

解説の本田さんがすぐに指摘し、本人も語っていたように全体にスピンのスピードがなかったのが物足りない点ではある、しかしまだ改善の余地があるのにこれだけの高い点数を叩き出したというのが素晴らしいことだと思う。

Bookmark and Share BlogPeople 人気ブログランキング にほんブログ村

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

管理者の承認後に反映されます。

http://vita-cantabile.org/mt/tb-vc/133

NHK杯 高橋、織田,小塚選手 表彰台へ!

NHK杯は高橋選手の初優勝でしたね。 SPはチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」にのって、ミスのない安定感のある演技で、1位に。 FSは「オペラ座の怪...

NHK杯(男子FS)

さあ、いよいよNHK杯も最終日。男子シングルのフリーです!(^o^)丿 本日は前日に引き続き、夕方から予定があったため、途中までは衛星ハイビジョンの生放...

NHK杯*最終日(男子FP)

最終日は生観戦でなかったわけですが・・・。いやいやびっくりしましたよ。(^^; 

コメント

大ちゃんのオペラ座の怪人、見れば見るほど好きになってしまいます。
どうしてかなあ〜と思いをめぐらせましたが、やはり構成力でしょうか。
一つのテーマとは思えないほど、盛り上がったり緩やかに流れたり。
聴いてて飽きないし、プログラム自体が心に残るんですね。
毎年、フィギュア使用曲CD発売してくれないかな〜〜
今季も好きな曲ばかりなもので。

-> sashaさん

やはり技が決まるとプログラムの印象も変わってきますね。予定した通りにきっちりこなすのはとても難しいけれど、それが出来た時には素晴らしい名演になる、そんな高度なプログラムかも知れませんね。

これだけ日本選手の活躍が続いて世間の注目が集まれば、またコンピレーションものが発売されることもあるかも知れませんよ。昨シーズンはラフマニノフだったけど今シーズンはチャイコフスキーとプロコフィエフが多い感じですね。

予想していなかった(爆)大ちゃんの素晴らしい演技&日本選手の素晴らしい演技&国旗が3つ一緒に上っていくのに感動し、思わず泣きそうになりました。ランビ君が来れなかったのはとても残念だけど、本当に素晴らしい内容で、長野まで行ったかいがあったと思います。
またぼちぼち観戦記など書いていってますので、よければご覧下さい。あと、男女ともファイナル進出者が決定しましたので、そちらの優勝予想(まずは女子。8日までです)していますので、よければまたご参加下さい。

-> モモさん

あまり期待して見ると心臓に悪いからだめかも知れないと覚悟して見ていたファンの予想を裏切る見事な演技でしたね。モモさんが地元岡山から駆けつけたお蔭かも知れませんよ。

観戦記、楽しみに読ませていただきます。ファイナルの予想ですか、またまた難題ですがよく考えて後ほど参上します。

モモさんが地元岡山から駆けつけたお蔭かも知れませんよ>って友達にも言われたのですが、調子乗っちゃいそうなので、あまりおだてないで下さい(爆)でも、優勝祈願が少しでも効いていたら嬉しいなと言う感じですが(笑)
観戦記、まだまだ終わりませんが(エキシビなども書くと一体いつまで続くのか分かりません)男子のフリーまでは書き上げましたので、ご覧下さい。
ファイナル、私自身もまだ予想しかねていますが、女子はやはり日本選手かユナ選手の可能性が高く、男子はジュベールか日本選手かと思っています。

-> モモさん

さすがに善光寺、御利益があったみたいですね。^ ^ モモさんの願いが通じて私もうれしいです。


観戦記、楽しく拝読しましたよ。
>「そんなこと言わないで」と思いつつも、自分自身もそう思っている所があり
という一節に受けてしまいました。


ファイナル、女子は日本の三人娘にヨナさんがどこまで迫れるか、という展開になりそうですね。男子はもう一人のモモさんのお気に入り、ライザチェクも注目だと思います。新プログラムのお披露目があるのか、楽しみですね。

投票の参加ありがとうございました。私も、真央ちゃんかなと思いつつ、美姫ちゃんに1票入れました。明日からは男子をしますが、やはり日本勢かジュベールでしょうかねえ、、、。エバン君も期待は出来るのですが、課題のショートがどうなのか、フリーは新しいのになっているのかなどある意味未知数の選手なので、予想がしにくいんです(爆)大ちゃんは、おそらくこの前と同じ構成にすると思うのですが、織田君、ジュベールはおそらく多少なりとも変えてきそう(織田君は4回転を入れるかもしれないし、ジュベールは得点稼ぎのために、コンビネーションジャンプを増やす可能性が高いので。4回転3回の彼より1回も入れてない織田君の方が点数が高いので、優勝を狙うとしたら変えてくるはず)なので、それが吉と出るか凶と出るかと言うのもありますし、、、。

-> モモさん

織田選手はインタビューに早ければファイナルで4回転を跳ぶ、と答えていましたね。ジュベールはロシア大会の演技がかなり密度の濃いものだったので変えるというのは容易ではない気もします。日本の2選手が海外での大会でほかに有力選手もいる、という状況であれほど高い点をもらえるかは微妙なところでもありますし。高橋選手がまた自爆せず会心の演技ができるか、ライザチェクの衣裳はまた真っ黒なのか、など男子も見どころ満載ですね。

織田君の4回転、記憶にないので、一体どうなるんだろうとすごく気になります。
そして確かにN杯での2人の得点は恐ろしく高かったので、ファイナルであそこまでの点が出ると言えばう〜んって感じもしますし。ですが、よくいくサイトさんなどで聞いたところ、やはり今の採点方式では、単発の4回転より、コンビネーションジャンプの評価が高く、減点も加点もない状態ですと、日本勢の方がわずかですが、得点が出るようになっているようなので、ジュベールもファイナルでの優勝を考えているなら、多少は得点の出やすいものに変えている可能性はなしではないと思います。もし変えないのなら、日本勢に比べ加点少ないらしいので、今出来るものをもっとレベルを上げるようにするとかでしょうか。

エバン君の真っ黒はまた極端ですが(爆)日本勢も黒の衣装でしたし、男子の今年の流行は黒でしょうか?ちなみに、うちの母は、エバン君のことを「この選手もかなり男前だけど、服装が地味と言うか、真っ黒すぎて、、、。スタイル良くは見えるのだろうけど。」と言っておりました(笑)

-> モモさん

お返事が遅れてごめんなさい。

面倒くさくてジャンプの基礎点の計算などはしていなかったのですが、4回転を減らしてもコンビネーションの構成をマックスにすればより高くできるのですね。そうだとすると確かに変えてくる可能性もありそうですね。さすがに4回転を3つ跳ぶのは心理的負担が大きいでしょうし。NHK杯での日本選手の高得点には地の利という面も大きかったと思います。ペテルブルクでも同じような点が出るかは未知数のところもあると思うので、各選手がベストの演技をした場合にはかなり際どい勝負になるでしょうね。

お母様もライザチェクの衣裳には苦言を呈しておられるのですね。^ ^ あれは彼の好みなんでしょうかね。私としては派手過ぎるよりはいいかな、とも思うのですが…。

コメントを投稿

最新のコメント

author

author’s profile
ハンドルネーム
sergei
モットー
歌のある人生を♪
好きな歌手
本田美奈子さん、幸田浩子さんほか
好きなフィギュアスケーター
カタリーナ・ヴィットさん、荒川静香さんほか

最近のつぶやき

おすすめ

あわせて読みたい

Giorni Cantabili を読んでいる人はこんなブログも読んでいます。